スクラム開発にかかわらず、プロジェクトを進める上で共通認識は大切です。
プロジェクトの目的やゴールをすり合わせるためのプラクティスとして「インセプションデッキ 」があります。
依頼元との認識がズレて苦労したり、開発者の間で意見が揉めたりして困ってます……
関係者全員で共通認識を持ち、合意を取ることが大切だよ!
その時は「インセプションデッキ」が活躍するよ。
・インセプションデッキとは何かわかる
・インセプションデッキを作成するメリットを理解できる
・インセプションデッキの作成方法や具体例を知れる
その他の「スクラム開発における作成物」が気になる人は、以下記事をご確認ください。
インセプションデッキとは?
プロジェクトが失敗する主な原因は、関係者全員でプロジェクトの方針やゴールに対して合意できていない状態でプロジェクトが開始されるためです。
インセプションデッキを作成することで、プロジェクトの方向性を整理し、関係者全員ですり合わせることができます。
インセプションデッキのメリット
インセプションデッキを作成することで、以下のメリットが得られます。
どれもプロジェクト開始前に確認しておく必要がある内容ばかりです。
インセプションデッキのフォーマットを活用し、しっかりとプロジェクト関係者と共通認識を持てるようにしましょう!
基本ルール・作り方
インセプションデッキの作成方法はとてもシンプルです。
[基本ルール]
作成者
・プロジェクトメンバーで作成する。
・プロダクトに直接関わる人であれば、誰でも参加可能。
(例:顧客、ステークホルダー、スクラムチームメンバーなど)
作成タイミング
・スプリント開始前に作成する。
※ 「スプリント0」の期間で作成することが多いです。
目的やゴールが曖昧な場合は「スプリント0」開始前から叩き台の作成を開始しましょう。
タイムボックス
・2,3日程度を目安に作成する。
※ 「アジャイサムライ」では、数日〜2週間程度と記載がありますが、状況は日々変化するため、プロジェクト開発時点で、初回作成に過度な時間をかけるのは適切でないと考えます。
[作成手順]
以下の「10個の質問」に答える形で作成します。
上記の質問は、「アジャイルサムライ」というアジャイル開発の書籍に記載されており、より広く認知されるようになりました。
10個の質問のテンプレートは、「“agile-samurai-ja”のGitHub」に公開公開されていますので、ダウンロードしてお使いください。
「アジャイルサムライ」の他にも、絶対に後悔しないアジャイル開発の教本を厳選し、以下の記事で紹介しています。
10個の質問の意図は?
質問①:我われはなぜここにいるか?
何のためにこのプロジェクトが発足し、チームを組んでいるのかを明確にします。
・自分たちの顧客は誰か?
・このプロジェクトが始まった理由は何か?
・なぜこのプロジェクトが必要なのか?
質問②:エレベーターピッチ
プロジェクトに資金を投じてくれるスポンサーにバッタリとエレベーターで居合わせた時、同乗している30秒の短い時間でアイデアの本質や魅力を伝えることを「エレベータピッチ」と言います。
以下の観点でプロジェクトの本質や魅力をまとめておきましょう。
・そのプロダクトは具体的に何であり、誰のためのものか。
・そのプロダクトの強みは何か。競合他社との差異は何か。
・そのプロダクトで重要なことは何か。
質問③:パッケージデザイン
プロジェクトの完成イメージを共有しやすくするものです。
作成したプロダクトを購入したくなるためには、どのようなことをアピールするべきか考えます。
・イメージロゴやキャラクターは?
・顧客にプロダクトの価値がアピールできるものは何か?
・広告などで目に入った時、何気なく利用した時、どんな内容だと良いか?
質問④:やらないことリスト
プロジェクトのスコープで「何を実現するか」は明確になっていることが多いですが、「何を実現しないか」は明確になっていないことが多いです。
以下の観点で整理し、一覧で管理しておきましょう。
・やることリスト
・やらないことリスト
・やるか、やらないか、後で決めるリスト
プロジェクトで何がスコープ内で、何がスコープ外なのか明確にすることで、チームが本当に重要なことだけに集中できるようになります。
質問⑤:ご近所さんを探せ
プロジェクトの関係者は、自分たちが思っているよりも意外と多いものです。
実際にプロジェクトメンバーはもちろん、何かあった時に頼れる外部のチームや顧客側の担当者など、プロジェクトに関わる全てに人を予め洗い出しておくことで今後の作業がスムーズになります。
質問⑥:技術的な解決策を描く
概要レベルで構わないので、アーキテクチャを描き、チーム全員に認識を確認しておきましょう。
アーキテクチャを描くことで技術的な課題が分かりやすくなり、その解決策が現実的かどうか判断しやすくなります。
・どのプログラミング言語にするか?
・ライブラリの構成はどうするか?
・利用するツールは何か?
質問⑦:夜も眠れない問題
プロジェクトで発生する可能性がある、またはすでに発生しているあらゆる「問題・課題・障壁」を洗い出し、その解決策を考えます。
・現時点の「問題・課題・障壁」は何か?
・どうすれば回避できるか?
・どうすれば被害を最小限に食い止められるか?
※作成時点で全て解決しようとするのではなく、可能な限りリスクを減らせるように努めてください。
質問⑧:期間を見極める
現時点、どのくらいの期間が必要なプロジェクトなのか考えておきましょう。
どの程度の時期までにどこまで完了させるか、などの大枠を可視化することで今後の作業にイメージを持って進めることができます。
※あくまで目標や推測であって、確約(commitment)するものではありません。
質問⑨:トレードオフスライダー
プロジェクトには、納期、スコープ、予算、品質など求められる要素がたくさんあります。
プロジェクト開始時点で「このプロジェクトで重要な要素は何か」を予め擦り合わせておくことで、問題が起きたときや判断に迷ったときの行動指標を作成しておきましょう。
[よくある要素]
・機能を全部揃える(スコープ遵守)
・予算内に収める(予算遵守)
・期日を死守する(納期遵守)
・バグを出さない(品質遵守)
質問⑩:何がどれだけ必要か
このプロジェクトに必要な「コスト・スキル・期間」がどれだけ必要か洗い出します。
以下の観点で考えてみましょう。
・初回リリースに必要なモノからコストや期間を洗い出す
・プロジェクトに必要なロール(役割)やスキルを洗い出す
※公開されているテンプレートでは「初回リリースに必要なもの」「俺たちのAチーム」という内容で検討しています。
具体例・サンプル
本サイトのインセプションデッキをサンプルとして添付させていただきます。
雰囲気だけでも感じてもらえると幸いです。
初回作成:インセプションデッキ_Ver1.0(2021/08/14)
更新:インセプションデッキ_Ver2.0(2021/05/21)※以下表示しているもの
※上記のインセプションデッキは、個人用であるため2〜3時間程度でざっと作成したものになります。
「インセプションデッキ」まとめ
[ポイント]
・プロジェクトメンバー全員が、目的やゴールの共通認識を持つためのドキュメント
・プロダクトの利用者・価値を明確にできる
・プロジェクトでの優先順位・重要度を明確にできる
・「10個」の決められた質問に回答するだけで、メンバーが目的やゴールを見失わずに済む
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