スクラム開発において、プロダクトバックログの作成時にプロダクトバックログアイテムの見積りが必要になります。
この記事では、ポイント見積りの手法として、よく利用される「プラニングポーカー」に関して、わかりやすく解説します。
時間ではなく「ポイント」で見積もってほしい
と言われているんだけど、理由や方法がわからなくて……
「ポイント」で見積もる意図がわからないと不安になるよね。
ポイントで見積もる理由、見積もり方法を解説するよ!
・時間ではなく「ポイント」で見積もる理由を理解できる
・「プランニングポーカー」でのポイント見積もり方法がわかる
・簡易見積もり「Tシャツサイズ」での見積もり方法がわかる
ポイントではなく「工数」や「金額」で見積もりを算出する必要がある方は、以下の記事をご確認ください。
なぜポイントで見積るのか?
スクラム開発において、プロダクトバックログアイテムを見積もる理由は以下2つです。
・今後のリリース計画を立てるため
・タスクに対して理解度を深め、チーム内で共通に認識を持つため
スクラム開発では、規模・難易度の見積りするため、具体的な意味を持たない仮想的な単位「ポイント」を使って見積りを実施します。
では、具体的な時間ではなく、「ポイント」で見積もる理由は何でしょうか?
[時間ではなくポイントで見積る理由]
時間で見積る場合
・担当する人のスキルや開発速度により完了までの時間が異なる
ポイントで見積る場合
・基準を設けることで、それよりも難しいか簡単かは誰でも見積れる
式で表すと以下のようになります。
この式で考えると、誰が担当するかによって「PBIが完了するまでの時間」は変化します。
プロダクトバックログの見積り時点では、開発速度によって変化する部分はおいておき「PBIの規模・難易度」の観点で見積りをしましょう。
プロダクトバックログアイテム(PBI)、スプリントバックログアイテム(SBI)に関しては、
以下の記事で詳しく解説しています。
プラニングポーカーとは?
プラニングポーカーとは、数字の書いてあるカードを使い、見積り対象のプロダクトバックログアイテムがどの程度の規模・難易度かをメンバー全員がそれぞれ見積り、タイミングを合わせて一斉に提示する手法です。
画像:LSMの研修でもらったものです
この時トランプ型のカードに書かれる数字は「フィボナッチ数列」になっています。
フィボナッチ数列を使うことで、大きいポイントのPBIほど誤差を含むことが表現され、またPBI間でのサイズ比較がやりやすくなります。
※フィボナッチ数列:1, 2, 3, 5, 8, 13, ‥‥
プランニングポーカーで準備するもの
【対面の場合】
・フィボナッチ数が記載されたカード
スクラム開発の場合、見積りに参加するのは開発者のみです。開発者の人数分のカードを用意しましょう。
Amazonなどでも簡単に購入できますが、手書きで作成したものやトランプなどで代用することも可能です。
【オンラインの場合】
・オンラインのプランニングポーカーアプリ
無料なプラニングポーカーツールをいくつか紹介します。
Plano、hatjitsu、Firepokerなどがあります。
画像:hatjitsu
対面で実施するのがベストですが、在宅勤務や異なる開発拠点とのリモート開発の場合は、Webアプリを利用しましょう。
プラニングポーカーのやり方
プラニングポーカーは以下の手順で進めます。
【事前準備】
事前に見積りを実施するメンバーへカードを配布しておきましょう。
オンラインの場合は、アプリ上にメンバーが全員集まっているか確認しておきましょう。
- 基準となるプロダクトバックログアイテムを1つ決める
- 見積り対象のPBIに対して、メンバー全員が各自ポイントを見積る
- 全員のタイミングを合わせて、一斉に選択したカードを公開する
- 数字が揃っていない場合は、各自見積り理由を説明する
- 他のメンバーの意見を踏まえて、再度PBIのポイントを検討する
- 数字が揃うまで 3〜5を繰り返す
プランニングポーカーの手順詳細
ポイントをスムーズに見積るためのコツは、ズバリ!「規模の比較」です。
ここで2つの質問をします。
質問1:以下の図でAは何㎝でしょうか?
質問2:以下の図でAとBどちらが大きいでしょうか。
Aが何㎝かすぐに答えられる人はいないと思いますが、AとBを比べてどちらが大きいかは誰でも簡単に答えられます。
このようにそれぞれの大きさは見積りづらいですが、両者を比較することで相対的に見積りがしやすくなります。
プラニングポーカーでポイント見積りを実施する前に、基準とするプロダクトバックログアイテムを1つ決めます。
全員が経験がある作業や共通イメージを持てる作業があればそれを基準とし、そのプロダクバックログアイテムを3ポイントとして見積りを開始しましょう!
※よく利用するポイント数は、1, 2, 3, 5, 8, 13です。基準となるものは2ポイントや3ポイントを目安に決定すると後々の見積りがやりやすくなります。
プロダクトオーナーから見積り対象のPBIの説明を受けた後、見積りに必要な観点でプロダクトオーナーへ質問をします。
見積り対象のPBIの内容が明確になったら、開発メンバー全員が各自で基準となるPBIと比較し、ポイントを見積し、カードを選択します。
各メンバーは選択したカードを提出し、タイミングを合わせて公開します。
見積りの結果が一致しない場合は、各メンバーに見積り理由を説明してもらいましょう。
なぜ5ポイントにしたの?
基準とした3ポイントの作業の2倍よりは小さいと思ったから。
なぜ8ポイントにしたの?
確かに大きさだけで考えると5ポイントくらいかなーって思ったんだけど
基準と比べると形が複雑だったから。
メンバー全員の意見を聞くと、見積り時に足りていなかった観点に気がつくことが多くあります。
他のメンバーの意見を踏まえて再度各自で見積りを実施します。
メンバー全員の見積り結果が一致するまで、3〜5の手順を繰り返します。
ただ、実施の現場では何度実施しても一致しない場合があります。
その時は、プラニングポーカーでの再見積り回数の上限を設けたり、3回実施して一致しない場合は見積りが大きい方にするなど、ワーキングアグリーメントにチームのルールを決めて追記しておきましょう。
簡易版プランニングポーカー(Tシャツサイズ)
プランニングポーカーをよりも更に簡易に見積る方法として「Tシャツサイズ」というものがあります。
「Tシャツサイズ」とは文字通り、Tシャツのサイズ、S、M、Lで見積る方法です。
見積り粒度は粗くなりますが、以下の場合は有効です。
初心者が多い場合は、Tシャツサイズでの見積りで経験を積み、ある程度慣れてきたら通常のプラニングポーカーを始めるのも一つの手です。
また、Tシャツサイズでの見積りはリリース計画を立てる際に有効です。
後半スプリントはTシャツサイズで見積もっておき、直近のスプリントはプラニングポーカーで見積りの解像度を上げるものおすすめです。
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