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【簡単解説】スクラム開発におけるレトロスペクティブの基本ルール・具体例

スクラム開発では、スプリントを繰り返しながらチームのプロセスや問題をカイゼンすることが重要です。

チームが成長し続けつために、スクラムイベントにおける「レトロスペクティブ」が鍵になります。

「ふりかえり」って実施はしているけど、イマイチ効果があるのかわからないんですよね……

とも坊

次へ向けたアクションをやりっぱなしにしないことが大切だよ
レトロスペクティブの基本知識から失敗例やノウハウを解説するね

この記事でわかること

・スクラムイベントにおける「レトロスペクティブ」とは何かを理解できる
・レトロスペクティブの基本的なやり方がわかる
・失敗例やノウハウを知ることができ、より効果的なレトロスペクティブが実施できるようになる

スプリントのスケジュールでいうと以下の赤枠部分です。

スクラムイベント全体像がわからないからは、先に以下の記事をご確認ください。

目次
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レトロスペクティブとは?

agile-retoro

レトロスペクティブとは、スプリント中のチームの活動やプロセスを振り返るイベントです。

また、スクラムイベントの一番最後に実施し、レトロスペクティブが完了を持って1つのスプリントが完了します。

スクラムガイドでは「品質と効果を高める方法を計画することが目的」と記載されています。

スクラムでは「透明性」のあるチーム・プロセスを通じて、反復的な「検査」と「適応」を繰り返すことで、チームをより良い方向に導きます。

目的・メリット

[目的]
レトロスペクティブを通して、スプリント中のプロセスや問題をカイゼンし、より機能するスクラムチームを目指す(開発効率を向上する)ことが目的です。

[メリット]
レトロスペクティブを実施することで得られる具体的なメリットは以下です。
・小まめに「ふりかえり」ができるため、感じたことを忘れる前に共有できる
・良かったことなど、ポジティブな観点をプロセスに落とし込める
・不安や問題など、漠然とした状態でも共有しても、チーム全員で改善策を検討できる
・具体的な改善策をすぐに次のスプリントで実行できる

とも坊

スプリントの度に、レトロスペクティブを実施することで、チームが改善が進み、開発効率が上がって行くんだね!

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基本ルール

[タイムボックス]
以下の時間を目安に設定する。
・1週間スプリントの場合:45分
・2週間スプリントの場合:1時間30分

[参加者/発言権]
agile-retoro-participant

[やること]
個人、チーム間、プロセス、ツール、完成の定義に対して、以下の観点でふりかえる。
・スプリント中に上手くいったことを洗い出す
・スプリント中に発生した問題を洗い出す
・スプリント中に解決したこと、解決できなかったことを洗い出す
・より機能するスクラムチームになるために、次のスプリントで取り組むことを決める

※ 選択する「ふりかえり手法」によって進め方は異なりますが、スプリント中の出来事を検査し、次のスプリントに適応するという観点は変わりません。

[作成物]
・次のスプリントで取り組むこと(アクションアイテム)

※ チームで話し合って決定したアクションアイテムは、次のスプリントで運用し、その効果を次のレトロスペクティブでふりかえるようにしましょう。

ふりかえり手法の紹介

①KPT(ケプト)

ふりかえり手法として、最も良く利用されている手法です。
上記のように、以下のKPTの観点で現状分析を行い、次のアクションを決定します。
・K:Keep = 良かったこと(今後も継続すること)
・P:Problem = 問題だったこと(課題だったこと)
・T:Try = 次に挑戦すること(やってみたいこと)

②FDL(ファン・ダン・ラーン)

スクラムチームがやったことを以下の3つの軸で振り返る手法です。
上記のように3つの円のベン図を描き、プロットしていくのが特徴です。
・F:Fun = 楽しかったこと
・D:Done = やったこと
・L:Learn = 学んだこと

③KDA(ケー・ディー・エー)

KPTと進め方は似ていますが、以下3つの観点で進める手法です。
アクションが増えてしまった時に、削減できる観点もあるのでオススメです。
・K:Keep = 良かったこと(今後も継続すること)
・D:Discard = やめること
・A:Add = 新たに取り組むこと

④TImeLine

スプリント中に、あったことや感情を時系列に沿って振り返る手法です。
メンバーのポジティブ、ネガティブな感情から振り返りができるので、わいわい楽しくできます。
・X軸:時系列に沿ってイベントを記載(あったこと、起きたこと)
・Y軸:その時の感情に沿ってプロット

⑤YWT

furikaeri-YWT

YWTは、スプリント中の「経験」を中心にふりかえる手法です。
過去の経験から学び・気づきをふりかえり、今後のスプリントに活かすことが目的です。
Y:やったこと
W:わかったこと
T:次にやること

(Y:やったこと)では、本スプリントで取り組んだことを、事実のみ、客観的に洗い出します。自分の考えなどの主観的な意見は含めないように注意しましょう。

(W:わかったこと)では、自分が感じたことを洗い出します。やったことを通して得た、学びや気づきを洗い出します。

(T:次にやること)では、わかったことで明確になった学びを今後のスプリントにどのように適応するかを検討します。

とも坊

「ふりかえり」の目的に合わせて、違った手法も試してみましょう!

レトロスペクティブのやり方

[基本的な流れ]
以下の順番で実施するとスムーズに進行できると思います。

ふりかえり手法:KPTを選択した場合

  1. レトロスペクティブの目的を簡単に説明する。(初回のみ)
  2. スプリントで「上手くいったこと・良かったこと」を洗い出す。
  3. スプリントで「上手くいかなかったこと・反省点・問題点」を洗い出す。
  4. 2,3の結果を元に、次のスプリントへ挑戦したいことを洗い出す。
  5. 4で洗い出したことの中から、次のスプリントで実施する「アクション」を決定する。

進め方のイメージ・具体例

慣れるまではスクラムマスターがファシリテートしましょう。

例:KPTで振り返りをした場合

スクラムマスター

スプリント1のレトロスペクティブをはじめます。
はじめての人もいるので、レトロスペクティブの目的を簡単に説明させていただきます。

レトロスペクティブの目的を共有
(全員に目的が浸透してきたらスキップしてもOKです)

スクラムマスター

1週間スプリントですので、45分で実施します。
今回は「KPT」を使って振り返りたいと思います。

実践する「ふりかえり手法」がどのようなものか、やり方などを共有

ファシリテートする人は、対面ならホワイトボード、オンラインなら「Miro」や「Jamboard」を使って、
上記のように作業が開始できる環境を予め準備しておきましょう。

スクラムマスター

はじめに「Keep」の洗い出しをお願いします。
今回のスプリントで「上手くいったこと、良かったこと」を個人で洗い出したあとに、全体で確認という流れで進めます。

開発者A

了解です!

プロダクトオーナー

はーい!

スクラムマスター

まずは、3分間で個人で洗い出しをお願いします。
「Keep」は黄色付箋を使ってください。

時間をしっかりと管理することで、各タスクに集中して取り組める環境を作りましょう。

はじめは、あっという間に時間が過ぎて、慣れていない人はいくつも思い浮かないかもしれません。
毎スプリント、反復してレトロスペクティブを実施することで、思いつく個数も、記載するスピードも自然と向上して行くので安心してください。

オンラインの場合は、以下のようにタイマーを画面共有して実施すると良いでしょう。

 
参考:https://timer.onl.jp

スクラムマスター

3分経ちましたので、順番に共有お願いします。

開発者A

では、私から共有させてもらいます。
在宅勤務が多くて、一人で働いている感が強かったので、デイリースクラムを顔出しで実施したのが良かったです。

スクラムマスター

みんなの表情が確認できるせいか、いつもよりも会話が盛り上がっていた気がします。

開発者A

そうですね。ネガティブなことも言いやすかった気がします。

上記のような形で、個人作業で記載したKeepしたい事を、チームで共有します。

スクラムマスター

続いて「Problem」も3分感で洗い出しをお願いします。
「Keep」と同様に、個人作業後に全体で共有の流れで進めます。
「Problem」は青い付箋を使ってください。

スクラムマスター

3分経ちましたので、順番に共有お願いします。

プロダクトオーナー

開発者のみなさんの残業が多いように感じました。
スプリントの計画に無理があったのかなー?と気にしています。

開発者A

スプリントバックログの見積りに大きなズレはなかったのですが、プロジェクト外の定常業務が多くあり、残業が増えてしまいました

「Problem」の共有を受けて、共通する課題がないかなど考えるようにしましょう。

スクラムマスター

最後に「Keep」と「Problem」の結果から、次のスプリントで挑戦してみたい、実施したいことなど「Try」の洗い出しをお願います。

スクラムマスター

こちらも3分で洗い出します。
「Try」は、緑色の付箋で記載してください。

KPT-3

スクラムマスター

3分経ちましたので、順番に共有お願いします。

プロダクトオーナー

開発者のみなさんの定常業務を考慮していなかったので、スプリントプランニングの時は、稼働の70%を目安にプランニングすることを試して見たいです。

「Keep」「Problem」の内容から、継続したい取り組みや試して見たいことを考えてスクラムチームに共有しましょう!

スクラムマスター

「Try」がたくさん出たので、次のスプリントで実施する「Action Item」にするものを「ドット投票」で決定したいと思います。1人3票まで投票お願いします。

KPT-dot-1
⬇︎
KPT-dot-2

「Try」が多く出た場合は、全て実施できないので、注力するものを「ドット投票」で決定しよう!

ドット投票:複数の結果に対して、素早く優先順位や重みづけをするためのプラクティス
 ※議論ポイントを絞るため「Problem」が多い場合でも「ドット投票」は有効です。

スクラムマスター

投票ありがとうございます。
4票入った「プランニング時に稼働の70%で計画する」と「デイリーとレトロは顔出しで実施する」を次のスプリントで実施することにしましょう!

一度に全てを取り入れるのは難しく、機能しないことがほとんどです。
ドット投票の結果で候補を絞り、次のスプリントに適応するアクションアイテムを決定しましょう!

スクラムマスター

アクションアイテムは、常に意識できる場所に掲示しておきます。
それでは、次のスプリントも頑張って行きましょう!

レトロスペクティブで決定したアクションアイテムはスクラムチームがいつでも確認できる場所で管理してください。
また、スクラムマスターはアクションアイテムの管理、実行支援を怠らないようにしましょう!

よくある失敗例・アンチパターン

レトロスペクティブが上手くいかない要因として以下のようなものがあります。

みなさんのチームに当てはまっているものがないか確認しましょう!

[失敗例]
・対面ならホワイトボードや付箋など、オンラインならMiroやJamboardなど、ふりかえりを実施する準備ができていない
・前回のアクションアイテムに対する評価ができていない
・ふりかえり時に時間管理ができていない
・アクションアイテムの実施時期や期間を明確にできていない
・すべてのアクションアイテムを実施しようとする
・ふりかり手法が毎回同じ

とも坊

開発者やプロダクトオーナーはスプリントが始まるとアクションアイテムを忘れがちです。スクラムマスターが管理を支援しましょう!

現場で活かせるノウハウ

レトロスペクティブは「ふりかえり」としての場だけでなく、スクラムチームのコミュニケーションを図る場としても非常に大切です。

スクラムイベントの1つとして機会的に取り組むのではなく、スクラムの価値基準(確約、集中、公開、尊敬、勇気)を改めて意識してみてください。

[ノウハウ]
・単に議論を開始するのではなく、ふりかえり手法を活用する
・ずっと同じふりかえり手法を使い続けない
・ふりかえりしやすい良い雰囲気を作ることを心がける(お菓子やジュースを用意しても可)
・ふりかえり場所を変えてみる
(オンライン中心なら対面でやるだけでも効果あり、公園などでできるとGood!)
・メンバーの意見は絶対に否定しない(共感できる点を探すようにする)
・過去と未来では、未来に焦点をおくようにする
・改善の構想は大きく持って、最初の一歩は小さく実施する(反復し少しずつ改善することが大切)
・スクラムチームが改善する問題とスクラムマスターが改善する問題は分ける
・ふりかえりの後にふりかえり手法に対する評価をする
・事前に個人作業で洗い出す内容を検討しておく
・アクションアイテムの決定に悩んだら、重要度×緊急度のマトリックスで整理する

「レトロスペクティブ」まとめ

[ポイント]
・レトロスペクティブは、スプリント中のチームの活動やプロセスを振り返るイベント
・タイムボックスは、1週間のスプリント場合は45分、2週間スプリントの場合は1時間30分が目安
・スクラムチーム全員で「良かった点(Keep)」「問題点(Problem)」「挑戦すること(Try)」を洗い出す
・「Try」の項目から次のスプリントで取り組む「Action Item」を選ぶ
・スクラムマスターは選ばれた「Action Item」を管理し、実行を支援する

参考資料

SCRUM BOOT CAMP THE BOOK
いちばんやさしいアジャイル開発の教本
Ryuzen.com

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