スクラム開発における「プロダクトオーナー」の役割は何ですか?と聞かれて、具体的に答えられる人は少ないと思います。
プロジェクトで「プロダクトオーナー」をやってほしいと
言われたんですけど、何をすればいいのか分からず……
はじめてプロダクトオーナーを任された人に向けて、
プロダクトオーナーの役割や責任、具体的な業務について解説するよ!
・スクラム開発における「プロダクトオーナー」とは何かを理解できる
・プロダクトオーナーの役割や具体的な業務がわかる
・プロダクトオーナーを実践する上でのノウハウを知ることができる
スクラム開発での開発体制や役割に関しては、以下の記事で解説しています。
プロダクトオーナー(PO)とは?
プロダクトオーナーとは、プロダクト価値を最大化することを考える人のことです。
簡単にいうと「何を開発するか決める人」のことです。
顧客にとって最も価値があるプロダクトを作成するためには、ニーズを正確にキャッチし、スクラムチームへプロダクトのビジョンを明確に共有する必要があります。
上図のように、プロダクトオーナーは以下のことを実施します。
・顧客への課題、ニーズのヒアリング
・関連部署との調整
・スクラムチームへ顧客の要望やプロダクトビジョンの共有
・プロダクトバックログの作成及び、スクラムチームへの説明
プロダクトオーナーはプロダクト価値の最大化のために、プロダクトやスクラムチーム、ステークホルダーと常に向き合い、コミュニケーションが取る必要があります。
そのため、他業務との兼業は必ず避けてください!
また、スクラムマスターとの兼務もするべきではありません。
スクラムマスターはプロダクトオーナーと開発者の架け橋となり、チーム全体のサポートを実施します。
役割的にプロダクトオーナーと兼務するには立ち位置的に難しいです。
役割・責任
「スクラムガイド」では、以下2つがプロダクトオーナーの責任として記載されています。
[プロダクトオーナーの責任]
・ターゲットとなる顧客に対して、プロダクトの価値が最大化すること
・プロダクトバックログを追加、削除、優先順位付し管理すること
[プロダクトオーナーの役割]
上記2つの責任を果たすために、以下の役割を担います。
・プロダクトゴール(ビジョン)を示すこと
・プロダクトバックログを作成し、見える化すること
・開発チームにプロダクトバックログの内容を説明し、理解してもらうこと
[プロダクトオーナーのスプリント中の役割]
・プロジェクトコストと時間を監督し、プロジェクトのステークホルダーに報告する。
・ステークホルダーの代表として、開発チームと連携する。(ステークホルダーとスクラムチームの窓口)
・開発者がアジャイルプロジェクトに集中できるようにする。
・スプリントのインクリメントに関して確認し、フィードバックを提供する。
・必要に応じて、新しいプロダクトバックログ(ユーザーストーリー)を追加する。
プロダクトオーナー が作成、管理する「プロダクトバックログ」に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
具体的な業務
[プロジェクト立ち上げ時期]
・プロジェクトの方針やゴールをステークホルダーと調整する。
・プロジェクト体制(SM、開発者)を検討する。
・プロジェクトのスケジュール決定や、リソースを調達する。
[プロダクトバックログ作成時]
・ターゲットとするユーザーや開発するプロダクトのゴールを決定する。
・プロダクトゴール実現のために必要なストーリー(機能)を洗い出す。
・初回リリースへ向けてMVPを決定する。
・スプリント期間を検討し、プロダクトバックログを作成する。
[スプリント中]
スプリントプランニング
・スプリントゴールを決定する。
・スプリントで実施したいPBIの内容を説明する。
・開発者の見積もり結果を元に、スプリントで実施するPBIのスコープを決定する。
リファインメント
・次のスプリントで実施するPBIの細分化・詳細化を実施しておく。
・PBLの優先順位を最新化しておく。
・変更があったPBIに関して、開発者に説明する。
・プロダクトビジョンの確認やリリース計画に関して、開発者と認識を合わせる。
スプリントレビュー
・レビューの参加者を事前に調整しておく。
・PBIのACを達成できているか事前に確認しておく。
・スプリントの成果をステークホルダーへ共有する。
・開発者のデモを通して、ステークホルダーからのフィードバックをPBLに反映させる。
・現在の状況やプロダクトの方針、リリース計画に関して、ステークホルダーと調整する。
スクラムイベントは基本的にはスクラムチームが協力して実施するものですが、上記3つのイベントはプロダクトオーナーが主体となって進めると効率がいいです。
慣れないうちは、ファシリテートをスクラムマスターに依頼しましょう!
「スクラムイベント」に関しては、各イベントの目的や概要を以下の記事で解説しています。
プロダクトオーナーに必要なスキル
- 幅広い知識・先見性
プロダクトビジョンを実現するために開発や製品に関する知識、技術的な知識はもちろん、将来のトレンドを意識するなど先見性が必要です。
- コミュニケーション能力
顧客へのヒアリングで潜在的なニーズを汲み取るためにも必要なスキルですが、プロダクトビジョンをスクラムチームへ共有するためにもコミュニケーション能力は重要です。
スプリントゴールやプロダクトバックログの内容説明が不十分で、失敗するプロジェクトはたくさんあります。
顧客とのやりとりだけでなく、スクラムチーム内でのコミュニケーションも大切にしてください!
- 決断力・発信力・情熱
一言で表すなら「リーダーシップ」と言えます。
ROI(費用対効果)を意識し、実現するストーリー(機能)を取捨選択できる決断力が必要です。
また、決断したことはステークホルダーやスクラムチームへ発信することも大切です。
そして最も大切だと考えるスキルは、プロダクト価値の最大化を常に意識し、周囲への働き掛けを怠らず、プロダクトビジョンを実現する「情熱」です。
プロダクトオーナーを担当するべき人
結論から言うと、プロダクトに対して意思決定権を持って人が担当するのが最適です。
プロダクトオーナーは、プロダクト価値を最大化するために、機能を取捨選択する必要があります。
ユーザーにとって価値のないことは、しっかりとNO!と
ユーザーにとって価値があることは、難しくてもYes!と
言える必要があります。
※ 特にNO!と言えるのが大切です。
しかしながら、日本の会社の多くは、ビジネス部門、マーケティング部門、開発部門、運用部門など、機能ごとに「縦割りな組織」となっていることがほとんどです。
下図の「機能横断的な組織」のように「意思決定権を持った人」が同じ組織にいることは少ないと思います。
開発部門でスクラムチームの体制を組もうとすると、プロダクトに対する権限を持っていない「なんちゃってPO」が生まれます。
※ PO業務は他の人に委任することはOKですが、最終的な責任はPOが持ちます。
その場合は、事前にスクラムの思想を共有し、可能な限り権限委譲してもらうことで、ビジネス部門の判断がないと何も決定できないという状態にならないように心がけましょう!
各部門がPOを担った場合のメリット・デメリットは、「吉羽 龍太郎様」の「ryuzee.com」でわかりやすく解説されています。
プロダクトオーナーとして活躍するためのノウハウ
これからプロダクトオーナーとして開発をはじめる人は以下を意識してください。
すでに実施している人はどのくらい実施できているかチェックしてみてください。
- プロダクトビジョンを明確に持っている
- ビジョンを実現するためのストーリー(要件)が固まっている
- 常にユーザー目線でプロダクトバックログを作成している
- ROIを意識したプロダクトバックログが作成されている
- プロダクトに対するKPIを定めている
- スプリントゴールを明確し、開発者と調整した上でスコープを決定している
- スプリント途中に仕様変更や追加をしない
- 開発者の実装方法などに口出しをしない(指示はしない)
- 顧客のフィードバックをプロダクトバックログに反映している
- チームであることを心掛け、SMや開発者と連携を小まめにとっている
- チームメンバーが相談しやすい環境や雰囲気になっている
- プロダクトビジョンの達成に責任を持っている
- チームの改善、成長に協力している
上記のノウハウは「Odd-e Japan社」のホームページ記事を参考にさせていただいております。
はじめから全部できている人なんていないから安心してね!
おすすめの資格(2選)
プロダクトオーナーには、以下の2つ資格がおすすめです。
・認定スクラムプロダクトオーナー (CSPO)
画像:Agile Business Institute社のHPから引用
Scrum Alliance認定スクラムトレーナーによる研修を受講し、プロダクトオーナーとしての基本知識が身についているとコーチが判断し、認定スクラムプロダクトオーナーに推薦されることにより「Scrum Alliance」から認定証が発行されます。
CSPO研修の概要と実際に受講した時のレポートは以下の記事で共有しています。
・ライセンスプロダクトオーナー (LPO)
Scrum Inc.認定スクラムトレーナーによる研修を受講し、受講後に認定試験の受験資格が与えられます。
認定試験で合格すると「Scrum Inc.」から認定証が発行されます。
「プロダクトオーナー」まとめ
[ポイント]
・プロダクトオーナーとは、プロダクト価値を最大化するために、何を開発するか決める人
・POは、プロダクト価値の最大化とプロダクトバックログの管理に責任をもつ
・POは、プロダクトビション、プロダクトバックログを作成し、理解してもらう役割がある
・プロジェクト立ち上げ期では、プロジェクトの方針や体制の決定、リソース確保を行う
・プロダクトバックログ作成の時は、ペルソナやプロダクトゴールを設定し、開発する機能を決定する
・スプリント中は、状況の変化やステークホルダーからのフィードバックに対応し、プロダクトゴールの達成を目指す
スキルアップへ向けたおすすめ記事
プロダクトオーナーを目指す人にぜひ読んでほしいおすすめの書籍を紹介しています。
実際に私が読んだ本の中で「絶対に損しない」初心者が読みやすい本をピックアップしてレビューしています。
教本選びのご参考になれば幸いです。
本を読んでいる暇がない!活字は少し苦手。。。という方は、動画教材がおすすめです。
通勤中や就寝前などに必要なセクションのみ選択して学習できるため学習効率が非常に高いです。
参考資料
・スクラムガイド
・Ryuzee.com
・Odd-e Japan
・ITトレンド
・IPA-アジャイル開発の進め方
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